娘は、皿に乗り、TVを見ていた。
当時、TVでは“平凡”という言葉がよく聞かれた。
“平凡な幸せ”とか、“平凡な家庭”とか……
“へいぼん”とは、何ぞやっ?!
娘には“へいぼん”の響きが、ひどく安っぽく感じられた。
“Hey! Bom”ん?
辞書で“へいぼん”を引いてみた。
“あたりまえ。ありきたりのこと”と記されている。
やはり、安っぽく感じられ、娘は“平凡”が嫌いになった。
“平凡は、ヤダ!”
“でも非凡は大変よ”と親が言う。
“ヒボン”……“ヒ・ボン!”……!
娘は、この言葉が気に入った。
きっと、スゴイ言葉に違いない!
娘は絵本を読んでいた。すると、
『トラがぐるぐる回り、溶けてバターになった』と書いてある。
トラのバターがひどくウマそうだ……
“これこそ、ヒボンに違いない”
親の手を引き、街に出る。しかし、
行けども行けども“ウシ”の箱のバター。
“ウシ”は分かるが“ウソ”は知らない……
“困った、困った”と親は言う―――――
娘が2歳になった時、家の中に変な生き物がやってきた。
“ウマレタ!ウマレタ!”と皆が言う。
どうやら“オトート”という生き物らしい……
“オトート”は良く泣き、良く眠り、
既に自分よりでかい!
なんで?
娘は“オトート”が憎らしい。
一人では何もできずに、泣いてばかり。
自分の親の気をひいてばかり……
ある日、攻撃に出てみた。
“ええいっ!”と敵の腹をふみつける。
“ムギュギュ〜〜”
敵は大泣き、娘は大イバリ、親は大笑い。
いや、大慌てだった。
翌日から“アネ”という役職を与えられ、
可愛がる仕事を申しつけられた。
2歳半〜3歳までを、娘は親と離れて暮らす。
雪深い山奥の祖父母の家に、修行に出たのだった。
毎日、ニワトリとブタとウシとイヌにエサをやり、ネコと昼寝をするのが日課。
半年間、動物だけが友達だった為に、
すっかりヒトに興味が無くなった。
娘の人格形成に大きく大きく影響を残す体験であった。
「アルプスの少女ハイジ」は自分の姿と本気で思い、
娘はハイジになりきった。
オトートはヤギ、誰彼かまわず「オジイサンッ!」
・・・困った困った、と親は言う。
ある日、先生が『クジラに乗った少年』の話を聞かせてくれた。クジラが、とてつもなく大きい事を知り、娘は胸打たれる……
先生は、その絵を描けと言う。
お友達は皆、クジラを描き終え、お遊戯の時間へ。
娘は一人、画用紙とニラメッコ……なぜなら、
“ガヨーシにクジラが収まらない!!”
悩んだ末に描いた、娘のクジラは?
後日、その絵は市長賞を受賞し、親を喜ばせたが、娘は、絵から遠ざかってしまった……
夏。娘は祖父母の家を流れる川で、流されては楽しんでいた。
水の流れに逆行しようとする難しさに、魅力を感じていたのだ。
この修行が、“アバンギャルドなくせに周囲に流されやすい”現在の本人を形成したと伝えられている……
娘は思う。“川は急流に限る!”と。
川の中でオシッコをした時、すぐに流れてくれて清潔な気分になれるからである……
(川下の方で、顔洗ってた人、ゴメンナサイ)
その夏、どうしても採りたかった“ギンヤンマ”。
ミントグリーンの身体で、ひときわ目立つ、このトンボを、娘はまるで妖精のように感じていた。
“ギンヤンマ”“ギンヤンマ”……
親が気付くと、娘はドロ池の中!
妖精相手に3時間の攻防が続いた……
このドロ池(南湖公園)に人が漬かっているのを、未だかつて、見た者はいない。(地元の人に聞いてみな!)
その年の標本は、何と県知事賞を受賞してしまい、親をウンザリさせる事となった。
娘はクラスで一番計算が遅く、給食を食べ終わるのもビリ、
四歳から続けたピアノの上達もノロく、ついたあだ名はカメ。
ある夜、急なお遣いを頼まれ夜のコンビニへ。
ところが娘、いくら待っても帰ってこない。
事件か!と必死に探す親の目の前に、
黄色の点滅信号をポカンと見上げた直立不動のマヌケ顔!
まだコンビニにも辿り着いていなかった。。。。。
車も通らぬ夜の白河で30分以上立ち尽くした理由は
「点滅の意味が解らなかったから」
その夜、娘の教育方針が再検討されたと聞く。。。。。
笑顔で大人をだます事を覚えた小学校高学年。
ついたあだ名はブッシュマン。
犬のウンコを手で掴み、男子トイレでタワシ投げ、
娘のイタズラぶりに担任が激怒し、
特別家庭訪問に吹っ飛んでくる程に成長(?)した。
そんな娘の初恋は同じクラスの植田君。
植田君は典型的な優等生で転校生で上品に笑う男の子だった。
彼が引っ越す日、クラスの女子達で学校を抜け出し車を見送った。
帰り道、娘は不覚にも涙。
バレぬよう誰よりも早く走った。。。。。
後日、なんと植田君から手紙が届く。(ただの挨拶文だったが)
それはクラス中にバレた!
なぜだ?ひやかす男子にタワシをぶつける娘。。。。。
それっきりだね植田君。覚えているかい?5年5組のブッシュマンを。